「不溶性食物繊維って聞くけどよくわかっていない」
「不溶性食物繊維を摂るとどう体にいいの?」
「不溶性食物繊維が多く含まれてる食べ物は?」
今回は不溶性食物繊維について働きや多く含まれる食べ物、正しい摂り方まで徹底解説します。
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がありますが、どちらも注目されがちなのは水溶性食物繊維です。
しかし不溶性食物繊維も有害物質の体外へ排出や便秘の抑制など私たちの体にとても役立っています。
健康に関心を持ち始めたばかりの人にもわかるようにわかりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください!
そもそも食物繊維とは?
まず、不溶性食物繊維の説明の前に、簡単に食物繊維自体の説明をします。
食物繊維とは、食べ物に含まれている成分で、人の消化酵素が分解できない(難消化性)成分のことです。
たんぱく質・脂質・炭水化物などは、口の中や食道、胃の中で唾液などの消化酵素によって分解され、小腸から体の中に吸収されていきます。
しかし食物繊維はこれら消化酵素によって分解されず、小腸を通過して、大腸まで到達します。
食物繊維の多くが、炭水化物の中の複雑な糖類(多糖類)で、消化されないため、エネルギーにはなりません。
エネルギー源として機能しないため、かつては意味がないものとされていましたが、現在では五大栄養素に次ぐ第六の栄養素として注目されています。
食物繊維の1日の摂取基準量は成人男性で20g以上、成人女性は一日に18g以上とされています。
そんな食物繊維には、大きく分けて不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2つの種類があります。
食物繊維とは
不溶性食物繊維とは?
不溶性食物繊維とは、水に溶けない食物繊維のことです。
みなさんがイメージしている食物繊維は不溶性食物繊維のことです。
不溶性食物繊維は、糸状やクモの巣状、へちま状といった複雑な構造になっており、ボソボソ、ザラザラとしている特徴があります。
不溶性食物繊維の3つの働き
次に不溶性食物繊維の3つの働きについてお伝えします。
不溶性食物繊維の働きは、
- 排便を促すことで、便秘の解消や抑制につながる
- 有害物質を吸着させて、体外に排出させる
- 腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を整え、さまざまな病気の予防になる
①排便を促すことで、便秘の解消や抑制につながる
不溶性食物繊維を摂取すると、腸の活動(蠕動運動)が活発になり、食べ物を胃や小腸、大腸といった消化管内にとどめる時間を短くすることでうんちを出すことを促します。
少しイメージしてみますと、うんちを出すことがゴールだとします。
そうしたときに不溶性食物繊維はリーダーとなり、胃や腸の水分や食べかす、腸内細菌などの死骸といったうんちの材料になるものを束ねてると考えるとわかりやすいかもしれません。
つまり不溶性食物繊維を摂ることで、排便を促し、便秘の解消や抑制につながるのです。
またうんち大腸にとどまる時間が長くなると、大腸内で腸内腐敗を起こします。
腸内腐敗を起こすと、悪玉菌が増殖し有害物質を発生させることにもつながるので、不溶性食物繊維を摂取することは重要な役割になります。
②有害物質を吸着させて、体外に排出させる
2つ目が、有害物質を吸着させて、体外に排出させることです。
不溶性食物繊維は水分や食べかすを絡めとります。
絡めとると、うんちの量が多くなります。
少し昔の研究にはなりますが、1972年のイギリスの医師デニス・バーキット博士による「食物繊維とがんの関係性」の研究がとても興味深いです。
研究では、食物繊維(おそらく不溶性食物繊維が中心)を多く摂取していたアフリカ農民と一般的な生活をしていたイギリス人学生のうんちの量を比較すると、4倍以上アフリカ農民の方が多いという結果が出ました。
つまり(不溶性)食物繊維を多く摂取している人の方がうんちの量が多くなるのですね。
この不溶性食物繊維があらゆるものを絡めとるときに、一緒に有害物質も絡めとり、体外に排出します。
有害物質が腸内にとどまっていると、悪玉菌の増殖を招き、便秘や肌荒れ、生活習慣病、がんなどの要因になります。
先ほどの実験についてももう少し詳しく考察をした記事を書きましたので、お時間があるときに読んでみてください。
食物繊維を多く摂るとうんちの量が4倍になる!?
③腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を整え、さまざまな病気の予防になる
3つ目が腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を整え、さまざまな病気の予防になることです。
善玉菌は構造が複雑で大腸まで消化されずに届く糖分をエサにします。
不溶性食物繊維の大部分はこの複雑な糖類であるため、善玉菌のエサになり、腸内環境を整えてくれるのです。
腸内環境が整うと、便秘になりにくくなったり、アレルギーの方の症状が軽減されたりと私たちの日常的な不調の改善につながります。
「腸内環境を整えるとは?」ということを詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
【執筆中】「腸内環境が整う」ってどういう意味ですか?
5種類の不溶性食物繊維
次に不溶性食物繊維の5つの種類についてお伝えします。
ここで知っておきたい不溶性食物繊維は、セルロースです。
私たちが摂取している不溶性食物繊維の多くがセルロースであると考えられるため、セルロースと聞いたら「不溶性食物繊維だ!」と思ってもらえればいいでしょう。
セルロース
セルロースは複雑な構造を持つ糖類の食物繊維(多糖類)で、人の消化酵素では分解されず、大腸なで届き善玉菌のエサになります。
セルロースは糖類の中で、地球上に最も存在していて、繊維素とも呼ばれている。
私たちが摂取している不溶性食物繊維の多くがセルロースであると考えられる。
ヘミセルロース
セルロースとはまた別の食物繊維で、複雑な構造を持つため、善玉菌のエサになります。
ヘミセルロースは、アルカリ水溶液に溶けることが可能なのが特徴です。
リグニン
リグニンはセルロースなどと結合して存在している物質です。
食物繊維としてのリグニンは、排便を促すのに役立ち、腸内環境を整えるのを助けます。
キチン/キトサン
キチン、キトサンは複雑な構造を持つ糖類(多糖類)の食物繊維です。
きのこ類やカニやエビなどの甲殻類の外の皮などに含まれています。
キトサンはキチンをアルカリ下で煮沸処理等をしたあとに、脱アセチル化という工程を経て得ることができます。
不溶性食物繊維が多く含まれる食べ物
次に不溶性食物繊維が多く含まれる食べ物について分類別に紹介します。
穀類
ライ麦:総量13.3g(不溶性食物繊維:10.1g、水溶性食物繊維:3.2g)
(ライ麦パン)
大麦:総量9.6g(不溶性食物繊維:3.6g、水溶性食物繊維:6.0g)
玄米:総量3.0g(不溶性食物繊維:2.3g、水溶性食物繊維:0.7g)
豆類
あずき:総量17.8g(不溶性食物繊維:16.6g、水溶性食物繊維:1.2g)
大豆:総量17.9g(不溶性食物繊維:16.4g、水溶性食物繊維:1.5g)
えんどう豆:総量17.4g(不溶性食物繊維:16.2g、水溶性食物繊維:1.2g)
レンズ豆:総量16.7g(不溶性食物繊維:15.7g、水溶性食物繊維:1.0g)
ひよこ豆:総量16.3g(不溶性食物繊維:15.1g、水溶性食物繊維:1.2g)
野菜
グリーンピース:総量7.7g(不溶性食物繊維:7.1g、水溶性食物繊維:0.6g)
モロヘイヤ:総量5.9g(不溶性食物繊維:4.6g、水溶性食物繊維:1.3g)
芽キャベツ:総量5.5g(不溶性食物繊維:4.1g、水溶性食物繊維:1.4g)
ごぼう:総量5.7g(不溶性食物繊維:3.4、水溶性食物繊維:2.3g)
ブロッコリー:総量4.4g(不溶性食物繊維:3.7、水溶性食物繊維:0.7g)
豆苗:総量3.3g(不溶性食物繊維:3.1g、水溶性食物繊維:0.2g)
果物
アボカド:総量5.3g(不溶性食物繊維:3.6g、水溶性食物繊維:1.7g)
ブルーベリー:総量3.3g(不溶性食物繊維:2.8g、水溶性食物繊維:0.5g)
キウイフルーツ:総量2.5g(不溶性食物繊維:1.8g、水溶性食物繊維:0.7)
きのこ
まつたけ:総量4.7g(不溶性食物繊維:4.4g、水溶性食物繊維:0.3g)
しいたけ:総量4.2g(不溶性食物繊維:3.8g、水溶性食物繊維:0.4g)
えのき:総量3.9g(不溶性食物繊維:3.5g、水溶性食物繊維:0.4g)
海藻
海藻の食物繊維に関する食品栄養学的研究によると、以下のように示されている。
わかめ:総量68.9g(不溶性食物繊維:59.9g、水溶性食物繊維:9.0g)
ひじき:総量60.7g(不溶性食物繊維:38.2g、水溶性食物繊維:22.5g)
ランキング形式で書いた記事もありますので、ぜひこちらもご覧ください。
不溶性食物繊維が多い野菜・果物ランキング
不溶性食物繊維を
効果的に正しく摂取するために大切な3つのこと
最後に不溶性食物繊維を効果的に正しく摂取するために大切な3つのことをお伝えします。
①不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は2:1のバランスで摂取するのが理想
今回は水溶性食物繊維についての記事ですが、食物繊維の中には、不溶性食物繊維と言うものもあります。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維にはそれぞれの特徴があるため、良し悪しはありません。
そのためどちらかの食物繊維に偏った摂り方ではなく、いろいろな食品と組み合わせて水溶性も不溶性もバランスよく摂取する事が大切です。
理想は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は2:1になるように食べることです。
②不溶性食物繊維をたくさん摂るほどいいというわけではない
不溶性食物繊維をたくさん摂るほど健康になることができると思っている方がいます。
しかしそんなことはありません。
国立がん研究センターの食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連についての研究によると、食物繊維が少ないと大腸癌になるリスクは高まるものの、量が多いほどリスクが低くなるということはないとわかりました。
また不溶性食物繊維の摂りすぎは、食べかすや水分などを絡めとりすぎることで、うんちが大きくなりすぎて排出がスムーズではなくなり、便秘になったり、排便時間が短くなりすぎることでしっかりと固まらず、下痢になることもあります。
極端に多く摂るのではなく、1日20g程度を目安に野菜や豆類などの食べ物から摂ることを心がけてください。
参考食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ国立がん研究センター予防研究部 | RSS
③不溶性食物繊維の含有量に縛られてはダメ!あくまで目安として
今回、一番大切なことを最後にお伝えします。
不溶性食物繊維は私たちの体においても有益な成分です。
しかし、不溶性食物繊維の含有量だけに縛られるような食べ方を私たちは推奨していません。
なぜなら、成分だけを追求するならば、食物繊維が多く入ったサプリメントでも良いからです。
食物繊維以外にも、ビタミンやミネラル、アミノ酸など私たちの健康を支える成分がいろいろ入っていて野菜なのです。
「野菜の成分を食べるのではなく、野菜そのものをまるっと食べることが良いよ」と言うことを伝えた記事も書きましたので、よかったらぜひ覗いてみてください。
成分信者になるな!病気にならないための正しい栄養の摂り方
そしてもう一つは、食事の意味は栄養だけではなく、おいしさを楽しむことです。
食べると言うことは、栄養補給だけではありません。
新しい出会いも食事から始まることも多いですし、日々の悩みも友人とランチ会で解決することもあるでしょう。
食べると言うことは、コミュニケーションの意味でも大切なのです。
不溶性食物繊維が多い野菜を知っていることで、健康的な食生活ができることに加えて、ちょっとした知識として仲間に伝えることで自分だけでなく、自分たちの周りの人も健康でいることができます。
おわりに
不溶性食物繊維について、お分かりいただけたでしょうか?
不溶性食物繊維は排便を促すことで、便秘の解消や抑制につなげたり、有害物質を吸着させて、体外に排出させる働きをしてくれます。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のバランスを大切にしながら、食物繊維たっぷりの野菜を食べて腸から元気になっていきましょう!